<社会保険加入強化> 強まる加入勧奨の動き 高い保険料払えない

「高くて払えない」と滞納が増えているにもかかわらず、加入促進の動きが広がる社会保険。2017年4月から、未加入の建設業者は現場から締め出されようとしています。社会保険をめぐる動きを追ってみると…。

「ピンク色の封書が送られてきて驚いた」。こう話すのは、岐阜県本巣郡北方町で22年間にわたり念珠製造の工房を経営する松岡さん。
送り主は日本年金機構。封書には「厚生年金保険・健康保険に関する重要なご案内」と赤字で記し、「加入状況等の確認」としながら、「法人事業所と従業員を常時5人以上雇用している個人事業所は、厚生年金保険等に加入することが義務付けられています」と明記。そして、加入していない理由を調査票に記入するよう求めています。
法人になる前の個人事業主時代に、国民年金と国保に加入した松岡さん。「法人設立直後に社会保険事務所(現・年金事務所)の人が来たけど、その1回だけ。その後は加入しろとか何も言われなかったよ」といいます。
すでに国民年金を受け取りながらの生活。「いまさら高い保険料も払えない」と、松岡さんは個人事業主に戻ることを考えています。
同じく本巣市で既製服裁断を営むの杉山さんも個人事業主への転換を検討している一人。法人になって26年。以前は長男も働いていましたが、今は夫婦2人だけ。保険機構のピンクの封筒に驚きましたが、問い合わせ先を見てさらにビックリ。仙台市の日立トリプルウィン㈱という初めて見る名前が。機構からの受託業務と書いてあるものの、個人事業主への転換を考えていると話すと、電話応対した社員は「いつ個人事業主になりますか。3カ月後であれば、その分の社会保険料を払ってください」と答えただけでした。
各地で広がる社会保険の加入促進。その背景にあるのは、国税庁から情報提供された源泉徴収義務者データを活用した、約80万社とされる未加入企業の加入勧奨を進める国の方針です。
千葉県では加入を迫られた自動車整備の法人社長が、保険料は払いきれないと思い悩み、整備工の社員にやめてもらった事例も。美容室経営の法人では、従業員から「社会保険に入ってほしいけれど、それで事業所が倒産したら大変」などの声も上がっています。

全国商工新聞(2016年12月5日付)

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