安倍政権が成長戦略の柱に据える「国家戦略特区」決定をめぐり、首相の友人が理事長を務める加計学園に首相らが便宜を図ったのではないかとの疑惑が深まっています。
首相の側近や内閣府が「総理のご意向」などとして、文部科学省に対し、愛媛県今治市への加計学園の獣医学部新設を認めるよう圧力をかけたとされるものです。
同学園には今治市が37億円の土地を提供し、県と市が総事業費のうち96億円も負担します。大阪府豊中市の国有地を格安で払い下げた「森友学園」問題など、‘国政の私物化’というべき数々の疑惑に、国民の怒りが大きく広がっています。
国家戦略特区とは、指定地域を「世界で一番ビジネスがしやすい環境」にするとして規制緩和や税制優遇を行う制度です。
加計疑惑のような問題が起きるのは国家戦略特区が、地方自治体が立候補・提案したそれまでの「構造改革特区」と異なり、首相が議長の特区諮問会議が規制緩和のメニューを策定し、それに見合った事業提案をした区域を特区に指定するトップダウン型で推し進められていることがあります(現在10区域)。
医療や雇用、教育、農業など、国民の生活、生命に直接関わる分野の現行システムを「岩盤規制」と称して規制緩和を推し進め、大企業のもうけを応援する点でも重大な問題をはらんでいます。
規制緩和のメニューでは、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の大幅な拡大が検討され、医療分野を市場原理に一任しようとしています。また、雇用についても解雇自由や労働条件の上限規制の撤廃などをもくろんでいます。
こうした「一国二制度」の存在を認める規制緩和は、法治国家をゆがめ、憲法25条(生存権保障)、同27条2項(勤労条件の法定化)、同95条(特定の地域に適用される特別法は住民投票の過半数を要する)違反との指摘もあります。
国民の安全・安心を脅かす規制緩和に反対するとともに、中小企業・中小業者を本格的に支援するため、大企業の横暴を規制強化する公正な取引ルールの確立こそ求められています。