セーフティーネット保証5号の部分保証化を盛り込んだ、中小企業信用保険法等の改正法案が6月7日、参議院本会議で可決、成立しました。法案が審議された衆参経済産業委員会では、日本共産党の真島省三(衆院)、岩渕友(参院)の両議員が「5号の部分保証化は断じて容認できない」と厳しく追及。世耕弘成経済産業相から「資金繰りに影響が生じないよう万全を期したい」などの答弁を引き出しました。国会での審議を通じて明らかになった課題を検証します。
部分保証の拡大に懸念
「中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律」は、(1)セーフティーネット保証5号を全額保証から部分保証(80%保証)に改悪(2)創業関連保証および特別小口保険(保証)の付保限度額を拡充(3)危機関連保証の創設-が柱です(別項)。公布後1年以内に施行。
〔5号改悪の三つの懸念〕
5号は、不況に苦しむ中小業者の「最後の砦」。リーマンショック後には対象業種を拡大し、約1万6100件の倒産を回避させてきました。
6月6日の参院経産委で岩渕議員は、部分保証化により、(1)新たに5号を利用する中小業者に対する貸し渋り(2)5号を利用している中小業者の追加融資が厳しくなる(3)信用保証制度を基盤とする自治体の制度融資への悪影響-の三つの懸念が、地方自治体や中小企業団体から示されていることを指摘しました。
創業、特別小口は2000万円に拡充
世耕経産相は特別小口保険の付保限度額の拡充や、信用保証協会・支援機関の連携による相談体制の強化なども併せて講じることによって「資金繰りに影響が生じないよう万全を期したい」と述べました。
〔条件変更先の支援〕
同相は、貸し付け条件の変更を行う企業の増加を「モラルハザードの一つの証拠だ」と問題発言をしていました。
岩渕議員は、5号を利用し条件変更をしながらも、4人の従業員を雇用している新潟・村上民主商工会会員(製造業)の実態を紹介し、「小規模事業者が条件を変更しながら、事業の持続的発展のために頑張っていることを評価すべきだ」とただしました。同相は「リスケ(条件変更)を繰り返している企業が本当にしんどい中で日々汗をかいて事業を続けていることは、十分認識している。小口の信用保証については100%の枠を2000万円まで増やすなど、温かい支援もしっかりと行いたい」と述べ、事実上モラルハザード発言を撤回しました。
〔特別小口保険(保証)〕
特別小口保険(保証)の付保限度額の引き上げは、民商・全商連として求めてきたものですが、今回の法改正で1250万円から2000万円への引き上げが実現しました。
特別小口保険は、2015年の法改正で部分保証(80%)に改悪されましたが、真島議員が当時の経産大臣から「(特別小口保険は小規模企業者については)引き続き100%保証として運用する」との答弁を引き出し100%を継続。法案審議で真島議員がさらなる継続を求めると、同大臣は「前々大臣の答弁はしっかりと維持していきたい」と約束しました。
〔危機関連保証〕
リーマンショックといった経済危機や東日本大震災級の災害を想定し、危機関連保証を新設しました(別枠で最大2.8億円。期間は「危機」発生から原則1年延長を含め最大2年)。真島議員は、22年がたった今も阪神・淡路大震災時の借入金の返済に追われている中小業者の窮状を示し、「現実の大震災はわずか1、2年ではとても元の状態には戻らない」と短すぎる実施期間の延長を求めました(5月17日衆院経産委)。
【解 説】
信用保証制度は、2007年10月に責任共有制度が実施され、一部の保証を除き原則、部分保証(80%保証)とする改悪が行われました。
15年の法改正では、NPO法人を信用保険の対象に加えることを理由に、条文上全額保証(100%保証)とされていた特別小口保険を部分保証としました。そして、今回の法改正にあたって政府は「金融機関が過度に信用保証に依存する」と「副作用」が生じると攻撃して、セーフティーネット保証5号にも部分保証を導入してきました。
今回の法改正について、全国商工団体連合会は東京土建一般労働組合と「5号の部分保証化は反対」と署名運動や議員要請行動に取り組んできました。
参院付帯決議では、「小規模事業者の資金調達に混乱が生じることがないよう十分に配意すること」が盛り込まれました。「資金繰りに影響が生じないよう万全を期したい」との大臣答弁も生かしながら、中小業者の資金要求に応える運動を進めつつ、特別小口保険など拡充される制度を自治体の制度融資にも反映させる取り組みが求められます。