倉敷民商弾圧事件 禰屋裁判判決にたいする声明

声 明

3月3日、岡山地方裁判所(裁判長江見健一)は、倉敷民主商工会の禰屋町子事務局員に法人税法と税理士法に違反したとして、懲役2 年(未決勾留日数中200 日を刑に算入)、執行猶予4 年の不当判決を言い渡した。この判決は、民商会員と事務局員が行う助け合いの自主計算・自主申告運動を敵視し、税理士法を悪用して団体自治に介入した検察と税務当局の一方的な主張に沿った不当極まるものである。「国民主権原理を謳(うた)う我が国の憲法上の要請からも十分に尊重さ
れるべきである」と判断した小原・須増事件の高裁判決から大きく後退し、「申告納税権が憲法上保障されているものでないことは明らかである」としたことは言語道断である。
また、税理士法違反について「組織性は顕著」とし、民商を組織的犯罪集団のようにとらえており、事実誤認に基づく判決に厳しく抗議する。「権力による弾圧」という事件の本質を見ようとしない裁判所の姿勢は許し難く、禰屋さんと弁護団は即日、控訴した。
そもそも、禰屋さんが法人税法に違反したとする裁判所の認定は事実に反している。禰屋さんの脱税ほう助を裏付けるために、I建設の経理担当者が行った証言は、法廷で二転三転したあげく、検察自身が「極めて高い信用性を有するとは言えない」と認めるなど、信憑性のかけらもないものであった。脱税の根拠とされた「売り上げの繰り延べ」は、売り上げ計上期日がずれていただけで、脱税の意図もなければ、それによって得た資産(いわゆる「溜り」)がないこともはっきりした。悪質な脱税者に追徴される重加算税についても、当事者と課税当局は口をつぐんだままである。裁判を通じて明らかになったのは、脱税ほう助は「冤罪」だったということである。断罪されるべきは、禰屋さんに脱税ほう助の罪を着せるために、犯罪をでっち上げた検察と国税当局である。
税理士法違反とされた禰屋さんの行為についても、「罰するほどの違法性がない」ことが明らかになった。会員が集計した数字を申告書ソフトに入力し、パソコンソフトによる自動計算で税額を算出した禰屋さんの行為によって、不利益を被った者は誰もいない。可罰的違法性がないにもかかわらず、税理士業20170303 倉敷・禰屋地裁判決への声明・岡山県連①務に関わる国税庁の通達を拡大解釈し、あるいは、課税の適正を乱す「可能性がある」という仮定に基づく理由によって人を罪に問うこと自体、あまりにも不当である。
さらに、裁判所は査察官報告書を鑑定書に準ずるものとして採用する前代未聞の対応をとりながら、弁護側が申請した証拠・証人をことごとく不採用にするなど検察側有利の偏った訴訟指揮をとった。このような審理は、憲法が保障する公平な訴訟を侵害する
ものであり、違憲とも言うべき対応である。罪を認めようとしないことを理由に428 日間も不当に勾留するなど、禰屋さんに対する検察の人権侵害を不問にしたことも許し難い。
私たちは、会員一人一人にこの判決の不当な中身を伝え、控訴審での無罪判決を目指して奮闘する。また、弾圧をはね返すため、申告納税制度と国民主権に基づく自主計算・自主申告運動をよりいっそう強め、納税者の権利を守る運動に全力を尽くす。そして、仲間を増やし、組織を強く大きくして、不当判決に反撃する決意である。

2017 年3 月3 日
岡山県商工団体連合会
会長 奥田伸一郎

PDF版 倉敷・禰屋地裁判決への声明・岡山県連