特別徴収通知書に個人番号記載 対応に悩む自治体 全国実態調査=全商連

6都府県で過半数が不記載
全国商工団体連合会(全商連)は10日、住民税の「特別徴収税額の決定・変更通知書(特別徴収義務者)」にマイナンバー(個人番号)が印字されて郵送されている実態調査の結果をまとめました。6都府県で過半数の自治体が番号不記載等で送付。番号漏えいを危惧する自治体が多数存在し、住民の要求に応えて来年度からは番号不記載を宣言する自治体があることもが判明しました。
調査内容は(1)個人番号の記載・不記載(2)郵送方法(書留等・普通郵便)(3)目隠しシールの有無(4)用紙の形態-です。
「記載」が852自治体(48.9%)、「一部記載(下4桁のみ番号記載など)」が80自治体(4.6%)、「不記載」が115自治体(6.6%)、「アスタリスク」が79自治体(4.5%)。「一部記載」「不記載」「アスタリスク」を合わせると274自治体(15.7%)となり、群馬、埼玉、東京、大阪、奈良、山口の6都府県では、過半数の自治体が不記載等になっています。
また、番号記載を基本としながらも「給与支払報告書に番号が記載されていない場合は不記載」扱いにした自治体が若干数ありました。

書留の費用なく番号を不記載に
郵送方法は「書留」等が301自治体(17.3%)、「普通郵便」が757自治体(43.5%)、「特定記録」が24自治体(1.4%)、「レターパック」が12自治体(0.7%)でした。
「番号記載は漏えいの危険があり、書留は多額の費用を要する」「(書留など)予算がないため不記載にした」など、課税事務に必要ない番号記載に、多額の費用をかけられないことを訴える自治体もありました。
目隠しシールは、「有り」が45自治体(2.6%)、「無し」が925自治体(53.1%)。個人番号が不記載やアスタリスク表示であっても、目隠しシールを貼っている自治体が19自治体ありました。
用紙の形態については、「普通の用紙」が815自治体(46.8%)、「綴じ込み(圧着)」が120自治体(6.9%)、「その他」が11自治体(0.6%)。

見直しを3回も 負担増えて迷惑
不記載等にした自治体の中には、「情報漏えいの危険があるため」「財政的問題」などを理由に上げています。
また、記載した自治体の中には、「3回見直して発送した。負担が増えて迷惑」など、住民の大事な個人情報保護を優先しつつも、財政措置など負担に苦慮していたことをうかがわせる回答も寄せられました。
※調査は1741自治体(2016年10月10日現在・市町村と東京23区の合計)のうち1130自治体の状況を集計。調査期間は6月1日から7月10日現在で報告があったもの。全国の約600ある民商が自治体への聞き取り、もしくは決定通知書が届いた民商会員からの聞き取りによって実態を確認して調査しました。

全国商工新聞(2017年7月17日付)

 

換価の猶予活用広がる-ご相談はお近くの民主商工会へ

消費税が一括で払えないとの声が広がり、各地の民主商工会(民商)は「換価の猶予」制度を活用しています。「分納できるので負担が軽くなった」「延滞税率が低くなった」と喜ばれています。

粘り強く交渉重ねて
群馬・前橋民主商工会(民商)のYさん=廃棄物処理=は6月5日、税務署長の職権による「換価の猶予」を実現しました。猶予期間は1年、12回に分けて5万円ずつを納付します。「あきらめないで交渉することが大事。換価の猶予が実現してひと安心」と話しています。
Yさんは2014(平成26)年に職権により換価の猶予が実現し、その後も分割で納付を続けてきました。本税は滞納がなくなったものの延滞税が残っていました。
今年は55万円の消費税が発生しましたが、取引先が減って売り上げが確保できず、一括で納付できなくなりました。事務局員とも相談し、収支と家計の状況が分かる資料を作成して税務署と交渉。併せて延滞税も納税計画を示し、職権型「換価の猶予」が認められました。

民商に相談して申請
「確定申告はしたけれど消費税が一括で納められない」と悩んでいた京都・南民商のIさん=印刷=はこのほど、申請型「換価の猶予」を実現。4月から2020年3月まで12回に分けて5万円ずつを納付します。
下京税務署に55万円の消費税の分納を申し入れたところ、応対した署員から「換価の猶予」の申請書が手渡されました。
初めての申請に書き方が分からず民商に相談。事務局員と相談しながら「換価の猶予申請書」や「財産収支状況書」を作成し4月12日、提出しました。税務署から電話で銀行口座に関する問い合わせが一度ありましたが、5月16日、「換価の猶予許可通知書」と納付書が送られてきました。
Iさんは「初めてで少し戸惑ったけれど、民商で記入の仕方の相談に乗ってもらえたので意外と簡単だった。毎月、安心して納められる」と話しています。

全国商工新聞(2017年7月17日付)

国家戦略特区で疑惑相次ぐ 国政私物化許さず適正な規制を

安倍政権が成長戦略の柱に据える「国家戦略特区」決定をめぐり、首相の友人が理事長を務める加計学園に首相らが便宜を図ったのではないかとの疑惑が深まっています。
首相の側近や内閣府が「総理のご意向」などとして、文部科学省に対し、愛媛県今治市への加計学園の獣医学部新設を認めるよう圧力をかけたとされるものです。
同学園には今治市が37億円の土地を提供し、県と市が総事業費のうち96億円も負担します。大阪府豊中市の国有地を格安で払い下げた「森友学園」問題など、‘国政の私物化’というべき数々の疑惑に、国民の怒りが大きく広がっています。
国家戦略特区とは、指定地域を「世界で一番ビジネスがしやすい環境」にするとして規制緩和や税制優遇を行う制度です。
加計疑惑のような問題が起きるのは国家戦略特区が、地方自治体が立候補・提案したそれまでの「構造改革特区」と異なり、首相が議長の特区諮問会議が規制緩和のメニューを策定し、それに見合った事業提案をした区域を特区に指定するトップダウン型で推し進められていることがあります(現在10区域)。
医療や雇用、教育、農業など、国民の生活、生命に直接関わる分野の現行システムを「岩盤規制」と称して規制緩和を推し進め、大企業のもうけを応援する点でも重大な問題をはらんでいます。
規制緩和のメニューでは、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の大幅な拡大が検討され、医療分野を市場原理に一任しようとしています。また、雇用についても解雇自由や労働条件の上限規制の撤廃などをもくろんでいます。
こうした「一国二制度」の存在を認める規制緩和は、法治国家をゆがめ、憲法25条(生存権保障)、同27条2項(勤労条件の法定化)、同95条(特定の地域に適用される特別法は住民投票の過半数を要する)違反との指摘もあります。
国民の安全・安心を脅かす規制緩和に反対するとともに、中小企業・中小業者を本格的に支援するため、大企業の横暴を規制強化する公正な取引ルールの確立こそ求められています。

全国商工新聞(2017年7月10日付)

風営法問題 「接待」でスナックのママが逮捕され、21日間拘留、罰金50万円の異常

風営法(風俗営業法)の許可を取らずにおしぼりを手渡すなどの接待をしたとして2月末、神戸市三宮でスナックを経営する民主商工会(民商)会員のママが警察にいきなり逮捕され、21日間の拘留、50万円の罰金を科されていたことが分かりました。会員の逮捕・罰金事例は札幌・ススキノ、京都でも起きており、風営法による逮捕・摘発は全国に広がる様相を見せています。

「窃盗より悪いのか」
逮捕されたのは、神戸市中央区の三宮でスナックをオープンし3年目を迎えた50代のママ。同区内で、30年以上美容院を経営していましたが、売り上げが頭打ちとなったため、地域とのつながりを生かして、2014年7月にスナック経営を始めました。
保健所から飲食店営業の許可を得て店をスタート。2周年を機に、ボックス席もある10坪の店に移転。サラリーマン客を中心に、平日は女性従業員2~3人で店を回していました。

午後11時過ぎに20人余の警察官
その店に、20人余の私服の警察官がいきなりなだれ込んできたのが2月23日。午後11時過ぎでした。名前を呼ばれたママは逮捕状を示され、手錠をかけられました。「風営法の許可とってないやろ。客の横に座ったらあかんのや」「おしぼりを手渡しても(接待基準)違反や」。人生初めての逮捕でした。
店にいたお客の勘定をしたのも手錠をかけたまま。従業員も含め、写真を何枚も撮られました。自宅、美容室もその日のうちに家宅捜索され、売上帳、従業員の給与明細、お酒の領収書などを押収されました。その後、病院に連れていかれましたが、血圧を測るときになって、医者の前で手錠を外されました。
連行された警察署では全身検査を受け、以来、21日間の取り調べが始まりました。午前、午後合わせ6時間。「なぜスナックを始めたのか」「なぜ風営法の許可を取らなかったのか」「ヤクザの出入りはあるのか」「客はどんな人間か」「従業員に売春させていないのか」「従業員はどんな人間か」「あんたがやったのはボックス営業だ」…。警察官が発した言葉でした。
「私は、保健所の許可があれば、スナックは営業できると思っていたし、風営法のことも知らなかったんです」とママ。何度も警察に説明しましたが、「分かってくれなかった」と言います。
押印を求められた調書にあ然としたこともありました。胸元が開いたドレスを着ていただけなのに「乳を出したエッチな服を着て…」などと書かれていました。「ママだけこんなことになって不公平と思わないか。同じようなことをしている店はないか」などと、‘密告’を奨励されました。
検察官による取り調べでは、風営法違反は「窃盗より悪い」といわれました。
従業員に対する取り調べも厳しいものでした。ブーツの中敷きまではがされた従業員もいます。「おしぼりの手渡し、水割りをつくる、カラオケを勧める、拍手も違反だ」「ママはもう店はできない。あんたやりたかったら、店をしたら。でもおしぼり手渡したら違反やで」といわれた従業員もいました。
釈放されたのは3月16日。この日「店内に設置のボックス席において客に酒類を提供するとともに、客席に同席して談笑等の相手方をするなどの接待をして遊興飲食をさせ」たとして起訴され、50万円の罰金が科せられました。4月に入り営業停止処分も受けました。

数カ月尾行されおとり捜査員も
ママは怒りをぶつけながら言います。
「スナックを始めるときに保険所の許可を取ったけれど、風営法の許可が必要とは誰も教えてくれなかった。そのことを知らなかった、と何度警察に言っても、『ウソつき』と言われた。それに数カ月前から尾行され、おとり捜査員のような人物も店に出入りしていた。取り調べでは『スナックのママは信用していない』『水商売の人間は信用していない』などと何度も言われた。でも飲んでカラオケを歌って元気になってもらうことが私たちの仕事。それがそんなにいけないことか。私たちがやっていることは、窃盗より悪いのか。本当に許せない」

おしぼり手渡しも「接待」!?
兵庫県警の「確認書」

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 風営法は「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」を風俗営業の「接待」とし、同法の許可を取らずに接待することは、風営法違反に当たるとしています。「接待」とは何か、を定めたのが、警察庁の「解釈運用基準」です。法律ではありません。
運用基準は「接待」について(1)談笑やお酌をする(2)ショーを見せる(3)カラオケでデュエットする。客の歌に手拍子をとり拍手する(4)ダンスをさせる-などとしています。
兵庫県警にいたっては、「飲食店営業を営まれる方へ」と記した「確認書」で「客のボックス席に同席(補助席を含む)或はカウンター席で客の横に座り、客に対して談笑する、酒を注ぐ、たばこに火をつける、おしぼりを手渡す、カラオケでデュエットする、遊戯やゲームを行う、客の手を握ったり身体を密着させるなどの身体接触、飲食物を口元に差し出して飲食させる行為等は接待行為」と明記。おしぼりを手渡すことや、たばこに火をつけることも「接待行為」としています。
また同県警は、こうした行為を事業者が「理解した」かどうかを確認するチェック欄をつくり、スナック経営者らに確認していることも明らかになっています。

全国商工新聞(2017年4月24日付)